HOLD司法書士事務所

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不動産の決済雑記 ①

こんにちは、司法書士の染谷耕平です。
当職のブログをご覧いただきありがとうございます。

我々司法書士のメイン業務として、「不動産の決済」とか「立会い」といわれる業務があります。

不動産業の方はもちろん、マイホームを買ったことのある方や
不動産投資をされたことのある方ならばご存じとは思いますが、
不動産の取引きは「売買契約と頭金の授受」
「不動産の決済(すなわち頭金を除く残代金の精算手続きです)」
「(鍵などの)引き渡し」などいくつかの段階に分けることができます。

そしてこの「売買契約と頭金の授受」と「不動産の決済(不動産の売買代金の精算手続き)」は、
別々の日に設定されていることが多く「不動産の決済」の場面には、ほぼ100%我々司法書士が立ち会います。

いつから不動産の決済に司法書士が立ち会うことになったのかを説明すると、
それだけで一記事書けてしまうので、それは別の機会に譲るとして…

通常、不動産の買主は数百万円から場合によっては億を超える売買代金を支払います。

不動産の売主が引き渡す不動産も、当然それ相応の財産になるわけです。

このような大きな財産同士の授受を安全に行うため、
一言でいえば「不動産取引の安全のため」に、
我々司法書士が売主と買主の中立な代理人として、
不動産の引き渡しと代金の支払いの現場を取り仕切るのです。

ところで、売買契約は「同時履行」が原則です。

「同時履行」、すなわちお金の支払いと品物の引渡しを同時に行うのです。
チョコレート1個であれば、これはとても簡単なことです。

お金と引き換えに「はいどうぞ」とチョコレートを手渡せばいいのです。

しかし、不動産の引渡しについては、実はそう簡単ではありません。

建物の引渡しは、通常は鍵の引渡しをもって行われるのですが、
法律的にはそれだけでは完全ではないのです。
ましてや土地のみの売買の場合、鍵はありませんので、
何を以って所有権が買主に移動したと言えるのでしょうか。

法律には、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従い
その登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(民法第177条) と規定されています。

つまり、不動産の買主は、登記をしなければ自分が所有者であることを万人に主張できないのです。

これに対してお金の支払いは、銀行振り込みを行えば確実です。

買主がお金を振込み、振り込んだお金が売主の口座に送金され、
通帳記入によってその事実が確認できれば、そこに誰も疑いを挟む余地はないでしょう。

ですから、不動産の売買においては登記がちゃんとされることの保証なしに、
買主が売買代金の支払いをすることは、とてもリスクのある行為なのです。

我々司法書士は、買主さんに対して、不動産の所有権移転登記が確実になされるのか否かを
見極めるジャッジとして、「決済」に呼ばれていると言っても過言ではないのです。

そして、所有権移転登記が確実になされるであろうことが確認できて初めて、
買主さんに売買代金の支払いを促すのです。

こうしてようやく、不動産売買における同時履行
(売買契約における代金支払いと物の引渡しが同時に履行されること)が完成します。

ここで、あの有名な積水ハウスの引っかかった「地面師詐欺事件」がなぜ起きたのか、
というようなことが気になった方は、ネットでいろいろお調べくださいね。

何十億円というお金が支払われたにもかかわらず、所有権も取得できず、
ちゃんとした登記も当然できなかったという怖い怖い事件です。

とても興味深いです。不動産取引には、常にリスクが付きまとっているのです。怖いですね。

つい先日も「不動産売買の同時履行」について考えさせられる出来事があったのですが、
それはこの続きとして、後日書くことにしましょう。

お読みいただきありがとうございました。

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